写真家・星野道夫さん

「写真家の星野道夫さんが取材先のロシア・カムチャッカ半島でクマに襲われ死亡」
もう20年も前のことだ。
何の番組を見ていたのかはさっぱり憶えていないけれど...
この速報がテレビで流れたことは今でも脳裏に焼き付いている。
当時はまだ写真なんてこれっぽっちも興味が無かったけれど、かろうじて星野道夫さんという名前だけは知っていた。
どんな写真を撮っているかなんて全然知らなかったし、見たことも無かったと思う。
そんな程度だったのに、画面の上を右から左へと流れてゆく白いテロップの文字を、ただ呆然と目で追っていたのを記憶している。
それから5年ほど経った時、ふらりと立ち寄った書店の本棚に並んでいた一冊の写真集が目に留まった。
星野さんのものだった。
一応新品ではあったけれど、帯は破れているし表紙は傷だらけで、ページもあちこち折れたり汚れたりしていた。
きっと多くの人が立ち読みをして行ったのだろう。
自分もそうするつもりで手に取り、ハードカバーの重い表紙を開いた。
...そして、次に気がついた時には、左手にその本が入った書店の袋をぶらさげて歩いていた。
適当な言葉が見つからない。
いや、言葉にするということが無理かもしれない。
その写真の中の世界に吸い込まれてしまった。
それからというもの、星野さんの残した数々の写真集や随筆を買い漁り、読みふけった。
そのどれもが、とにかく素晴らしかった。
まだ行ったことが無いアラスカの大地と、そこを悠々と歩く野生動物たちの姿を想像するのは楽しかった。
それから数年、カメラを持ってカナダやアラスカを旅するようになった。
もちろん、星野道夫さんに憧れてのことだ。
「あんな写真が撮りたい」と。
でも、それは無理だと悟った。
自然の雄大さ・厳しさ、野生動物の雄々しさ・神々しさ...
私が撮ると、どうやってもそれらが写らないのだ。
そんな悩んでいる時、気分転換にと旅に出ることにした。
北米のことは少し忘れたかったので、行き先は学生時代以来のヨーロッパ。
当時、ひとつ行き損ねていた国...
その国こそ、ギリシャだった。
もし、星野道夫さんという写真家がいなければ...
私とギリシャとの出逢いは無かったかもしれない。
残念ながら先日9月5日で終わってしまったのだけれど...
今、私が作品展をしている銀座のギャラリーの近くの百貨店で、星野さんの写真展が開催されていた。
もちろん、私もギャラリーの帰りに足を運んだ。
亡くなられて20年...
ということは、数々の写真はさらにそれよりも前のものばかり。
なのに、どの作品も色褪せること無く生き生きとしていて、アラスカの冷たい風や草の匂い、静寂の中に微かに聞こえる鳥や小動物の鳴き声などが、まるでそこにあるかのように伝わってきた。
『僕はまだ生きているよ?』
帰り際に見た一枚のポートレート。
写真の中から優しく微笑みながら
星野さんはそう語りかけてきた。
Photo:
写真はもちろん、文章もとても素敵
読書の秋・秋の夜長
是非、星野道夫さんの著作を
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ASUHA-明日葉- 作品展『エーゲ海のねこ シエスタの町から』
2016年9月3日(土)〜19日(月・祝) 11:00〜20:00(最終日は17:00まで)
※毎週月曜日休廊、ただし最終日19日は祝日のため開廊
入場無料
MIKISSIMES GINZA GALLERY(ミキシム銀座ギャラリー)
東京都中央区銀座1-7-7
ポーラ銀座ビル4階
本人在廊予定(9月15日夕方現在):
9月17日(土)・18日(日)の14時〜16時(時間の許す限り延長あり)
9月19日(月・祝 = 最終日)の15時〜17時


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