『エーゲ海のねこ シエスタの町から』エピソード・22

ランチにしようと、とあるタヴェルナを訪ねた。
ランチと言っても、お昼はとっくに過ぎて、すっかりシエスタの時間。
おまけに、バカンスシーズンが去って秋の風が吹いている。
だから、客は誰もいない。
すぐ目の前には小さな桟橋があって、朝にはそこに漁船が横付けして魚の売買が行われていた。
エーゲ海の小さな島には、店舗を構えた魚屋というものは無い。
魚を得るには港で漁師から直接買い付けるか、その魚をピックアップトラックで売りに走る業者(それも無い島も多い)から買い求めるかのどちらかだ。
このタヴェルナは店の前で水揚げされた魚をいただけるから、きっと美味しいに違いない。
日の出前に朝食をとってから水以外何も口にしていなかったので、もうお腹はペコペコ。
ワクワクしながら岸壁に面した席に座ることにした。
海の中にはたくさんの小魚が群れているのが見える。
沖には行き交うフェリーやヨットの姿。
そんな素敵な広いオープンテラスが貸し切り状態だ。
まずは落ち着こうと、エーゲ海の色をした椅子を引いた。
でも、なんだかとても重いような...。
もしかして...?
テーブルの下を覗き込むと、椅子の座面にお昼寝中のネコ。
どおりで重いわけだ。
せっかくシエスタを楽しんでいるのを邪魔したくないので、私は隣の椅子に。
ネコに見つめられながらの食事は、さっぱり味がわからなくなってしまう。
食事をねだられるかな?...と思ったけれど、ずっと隣でスヤスヤと夢の中。
おかげで私は、とびっきり新鮮な小魚のフライを美味しくいただくことができた。
テーブルチェックを済ませて、立ち上がろうとしたその時。
膝の上に温かくて、ずっしりとした感触。
乗って来ちゃった、困ったな...。
「こんな状況だから、もう少しいてもいい?」
そうウエイターさんに尋ねると、笑顔で
「好きなだけゆっくりして行けばいいよ」と。
秋の優しいお陽さまと爽やかな海風。
膝の上には気持ちよさそうに眠るネコ。
波の音がまるで子守唄のように聴こえて...
気がつけば、陽はすっかり傾いて琥珀色。
居眠りをしてしまったらしい。
膝の上で寝ていたはずのネコも、どこかへと消えてしまっていた。
シエスタの町の秋。
細やかだけど、至福の癒しの時間だった。
Photo:
その膝の上で寝ていたネコ
港の出口で見送ってくれた
「また逢おうね!」
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『世田谷アートフリマ つながり展 2017』に出展します(詳しくはコチラ)
2017年9月2日(土)〜10日(日) 9:00〜20:00
入場無料
生活工房ギャラリー
東京都世田谷区太子堂4-1-1
世田谷文化生活情報センター
キャロットタワー・3階
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